「新・自由加速時間」という考え方指標が進化するとき
以前、このブログで「自由加速時間(Free Acceleration Time)」という概念をご紹介しました。
馬がコース上で外的な制約を受けることなく、自らのリズムで加速できた時間を数値化したもの。PCIやRPCIを軸に、東京芝のような長い直線で特にその威力を発揮するという考え方でした。
しかし、使い続けるなかで、ある限界が見えてきました。
PCIを基準にすると、結果として「上がりの速い馬が上位に来る」という構造になりやすいのです。それは決して間違いではないのですが、「上がりが速かった」という結果だけでは、なぜその馬がそれだけの脚を使えたのかは見えてきません。
そこで生まれたのが、「新・自由加速時間」という考え方です。
原点に戻る「ロスなく強い脚を使えたか」
新・自由加速時間のベースにある問いはシンプルです。
どれだけその馬が、レース中にロスなく自分の強い脚を使えたか。
上がりの速さそのものよりも、「強い脚を無駄なく発揮できた時間」を問う。これが旧来の自由加速時間との、本質的な違いです。
ただし当然ながら、仮にすべての馬がロスなく自由に走れたとしても、勝つか負けるかはまた別の話です。そこで重要な基準として浮かび上がるのが、「補9(補正タイム)」です。
補9の高い馬というのは、レベルの高いレースで勝利を収めていたり、上位争いの接戦を演じてきた馬です。そういった馬は、結局のところ自由加速時間を実際に使うことができていた、つまり自由加速時間があったからこそ、あれだけの補9を記録できたのだと言えます。
補9は、その馬が「いかに自由に走れてきたか」の結果でもあるのです。
もう一つの主役騎手という存在
ここで、見落としがちな視点を加えたいと思います。
自由加速時間を「作り出す」のは、馬だけではありません。
進路を確保する。脚を溜めるタイミングを選ぶ。馬の行きたがる気持ちをいなしながら、最もいい場所へエスコートする。こうした行為を担うのは、言うまでもなく騎手です。
馬の能力がどれほど高くても、それを引き出す騎乗がなければ自由加速時間は生まれません。逆に、ひとりの名手の判断ひとつで、能力以上のパフォーマンスを発揮する馬もいます。
新・自由加速時間では、この「騎手の貢献」を明示的に組み込みます。
騎手のランク付けと「乗り替わり補正」
勝利数が多く、重賞を何度も制してきた騎手というのは、馬の力を引き出す技術と経験を兼ね備えています。重賞を勝つということは大きな賞金を稼ぐということであり、勝率・賞金獲得額などを総合して騎手を「SS」「S」といった形でランク付けすることを考えています。
そして特に重視するのが、乗り替わりの影響です。
- 継続騎乗(例:ルメール→ルメール):騎手補正はゼロ
- 格上への乗り替わり(例:下位騎手→ルメール):補正はプラス
- 格下への乗り替わり(例:ルメール→下位騎手):馬に人気がある場合は補正マイナス
ただし、格上騎手からの乗り替わりで人気が著しく下がった場合は、すでに市場が騎手補正をしているので、騎手補正よりも補9そのものを重視する方向で考えています。
また、短期免許で来日する外国人騎手(レーン騎手やモレーラ騎手など)については、原則として騎手補正はプラスです。一方で、彼らが帰国した後に騎乗する騎手には、マイナス補正を加える形になります。
「自由加速時間の恩恵」を最も受ける馬とは
脚質という観点から見ると、自由加速時間の恩恵を最も受けやすい順番は以下のようになります。
1. 逃げ馬 単騎で逃げた場合、外的な不利がほぼゼロです。自分のリズムで飛ばして、自分の上がりで押し切る。これが最も「自由加速時間」を純粋に体現するパターンです。
2. 先行馬 前につけてスムーズに抜け出してくるタイプ。進路を確保しやすく、騎手の判断が活きやすい位置取りです。
3. 中団 内か外か、ペースや馬場状態によって全く異なる判断が求められます。騎手の技量がダイレクトに結果に影響する場所でもあります。
4. 後方 上がりは速くとも、着順が伴わないケースが多い脚質です。「届くかどうか」は、展開という外的要因に大きく左右されます。
ただし、ひとつ注意が必要です。
過去の位置取りだけで判断してはいけないという点です。
たとえば2000mでは先行していた馬が、1600mのレースでは折り合って後方になることがあります。しかしその馬には本来の能力があるため、後方から差し切ってしまうことがある。そういうケースを見落とさないためにも、「この前のレースが後ろだから」という固定観念は、予想においては危険なのです。また、若駒においては能力の違いで先行することがありますので、脚質にこだわらず能力で判断した方がいいです。
まとめ指標は問いを立て直すことで進化する
旧・自由加速時間が「どれだけ自由に加速できたか」を問うたとすれば、
新・自由加速時間が問うのは「誰が、何によって、その自由を作り出したか」です。
馬の実績(補9)と、騎手の技術(乗り替わり補正)。そして脚質が生み出す構造的な有利・不利。これら三つを組み合わせることで、単なる「上がりタイムの評価」を超えた予想の軸ができあがると考えています。
数字は事実を教えてくれますが、「なぜその数字になったか」を問い続けることが、予想の精度を高める唯一の道だと、僕は思っています。
新自由加速時間の指数化については現在構築中です。
コメント