僕はいま、競馬のデータツールをいくつか回しています。ひとつは「逃げ馬メーター」。そのレースでハナを切りそうな馬を確率で出すもの。もうひとつが、その裏返しの「差し馬メーター」で、後ろから差して来る馬を拾うものです。
先に逃げ馬メーターを作って、しばらくして差し馬メーターを作りました。で、差し馬メーターを作っているときに、ひとつ大事な基準を置いたんです。「上がり3Fが速いだけの馬は、いくら決め手があっても、実際に3着以内に来なきゃ意味がない」。切れ味の数字だけ立派でも、着順に結びつかない馬は買えない。だから差し馬メーターでは、決め手が着順に結実した馬だけを「本物」として拾うようにしました。
作り終えて、逃げ馬メーターを眺めていて、あれ、と思ったんです。これ、逃げの方にもそっくり同じことが言えるじゃないか、と。
アプリを作っていると、アイデアが引っ越してくる
これ、2つ作ってみて分かったことなんですが、片方のアプリで考えたことが、もう片方にそのまま効く、ということがよく起きるんです。差し馬で「決め手より着順」と気づいたら、逃げ馬でも「逃げること自体より、逃げてどうだったか」が大事だと気づく。ひとつの道具を磨いていると、隣の道具の欠けているところが見えてくる。
なので、差し馬メーターで生まれた考え方を、逃げ馬メーターにも引っ越しさせることにしました。持ち込んだのは、だいたい4つです。
① 逃げただけじゃダメ、逃げて残ってこそ
まず基準です。逃げ馬メーターは元々「ハナを切る確率」を出すものでした。でも、ハナを切っても後ろから飲み込まれる馬はいる。逃げること自体と、逃げて好走することは、別なんですよね。
そこで過去のデータを調べてみました。同じ馬でも、逃げた時は3着以内に来る率が46%、逃げられなかった時は24%。倍近く違うんです。そして面白いのが、この差が特別に大きい馬がいること。逃げた時は3着内66%、でも逃げられないと18%。逃げれば買い、逃げなきゃ消し。そういう「逃げてこそ」の馬が、調べた2,000頭あまりのうち、4割以上もいました。
なので、そういう馬に「逃げ注意」の印をつけるようにしました。この馬がハナを切れそうなら、しぶといから警戒。逃げられなさそうなら、あっさり消し。差し馬で置いた「結果に結びついてこそ」の基準が、そのまま逃げの武器になりました。
② 逃げる力と、先行する力は別もの
次に、力を2つに分けました。「逃げ馬力」は、単純にハナを取れる力。「先行力」は、1〜3番手につけて、しかも1〜3着に来る力です。
なんでこれを分けたかというと、逃げ馬が複数いるレースだと、必ず何頭かは番手に控えるからです。逃げられなかった時に、それでも前で粘れる馬と、ずるずる下がる馬がいる。テンの位置別に成績を見ると、前にいるだけで全然違うんです。
| テンの位置 | 3着内率 |
|---|---|
| 逃げ(先頭) | 41% |
| 先行(2〜3番手) | 34% |
| 中団前(4〜5番手) | 28% |
| 中後方(6番手以下) | 15% |
だから「先手を取れるか(逃げ馬力)」と「前で残せるか(先行力)」を、別々に見えるようにしました。
③ コースで逃げやすさは全然違う
3つ目はコースです。これも差し馬メーターで「差しの決まりやすさはコースで何倍も違う」と分かったので、逃げでも同じことを調べました。
案の定でした。同じ「逃げ」でも、コースによって3倍以上ちがう。ダートの短距離は逃げ先行の天国で、長い芝は逃げても止まる。
| コース例 | 逃げ→3着内率 |
|---|---|
| 阪神ダート1000m(逃げ天国) | 68% |
| 中京ダート1200m | 49% |
| 東京芝1800m(標準) | 40% |
| 阪神芝2600m(逃げ止まる) | 21% |
これをコースごとにグループ分けして、「このコースは逃げ天国」「ここは逃げ止まる」と一目で分かるようにしました。
④ コース図鑑もついでに
最後は、そのコース分けを一枚にまとめた「逃げ馬コース図鑑」です。これも差し馬メーターで作ったものの逃げ版。全コースを、逃げが残りやすい順に並べて眺められます。眺めているだけで、ああこのコースは前が有利なのか、というのが分かる。
▶ 逃げ馬コース図鑑
作りながら、考える
こうして、差し馬メーターで生まれた4つの考え方が、そっくり逃げ馬メーターに引っ越してきました。逆に、逃げ馬メーターで先に作った仕組みが、差し馬メーターに活きたところもあります。2つの道具が、お互いを育て合っている感じなんですよね。
正直、最初から全部の設計が見えていたわけじゃありません。ひとつ作って、使って、隣を作って、また戻って直す。その繰り返しの中でアイデアが湧いて、それをAIに「こうしたい」と伝えると形にしてくれる。僕はコードは一行も書いていません。でも、何を作りたいか、どの基準が正しいかを考えるのは、やっぱり人間の仕事です。
競馬予想が当たるかどうかは別として、この「作りながら考える」時間が、いちばん面白いのかもしれません(^^ゞ
サンプル
※データはすべてPC内で完結していて、外部には公開していません。集計はJRA-VAN/TARGETのデータを使っています。
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