このところ「逃げ馬メーター」という自作ツールを回しています。そのレースでハナを切りそうな馬を、過去のデータから確率で出すだけのものです。毎週、予想の1位が本当に逃げたかを答え合わせしているんですが、外れるときのパターンがどうも気になっていました。
予想した馬が逃げられず、代わりに前へ行ったのが、逃げ実績のそんなに無い別の馬だったりする。で、その馬の鞍上を見ると、なんというか、いつも前に行っている騎手なんですよね。
そこでふと思ったんです。逃げるかどうかって、馬の脚質だけじゃなくて、乗っている騎手の性格もあるんじゃないか、と。
最初は「馬で決まる」と思っていた
正直、最初は半信半疑でした。逃げるか差すかは基本的にその馬の脚質で決まるもので、騎手はそれに従って乗るだけ。騎手の影響なんて誤差の範囲だろう、くらいに思っていたんです。
でも思っただけだと分からない。だったら調べればいい。幸い、僕のPCにはTARGETという競馬ソフトのデータが入っています。ここから2021年以降の全レース、騎手ごとに「最初のコーナーを先頭で通過した割合」を数えてみることにしました。
やったことといっても、AIに「このデータから騎手別の逃げ率を、芝ダ別・距離別・コース別に集計して」とお願いしただけです。黒い画面に英語がズラズラ流れて、しばらく待つと表が出てくる。僕はコードを一行も書いていません。ChatGPTに調べ物を頼むのと、感覚はそんなに変わらないんです。
集計できたのは、約28万騎乗ぶん。全馬をならすと、どの馬もどの騎乗も、最初のコーナーで先頭になる確率は7%くらい。14頭立てで1頭が先頭なんだから、まあそんなものです。
逃げる騎手は、はっきりいる
ところが騎手ごとに分けたら、これが7%どころじゃありませんでした。
トップは小林美駒騎手の14.6%。全体平均の2倍です。続いて坂井瑠星騎手が11.5%、松山弘平騎手が11.4%。この辺りは「気づいたら前にいる」タイプですね。逆に、逃げ率が1%を切る騎手も何人かいて、こちらは徹底して脚をためる。同じレースに乗っていても、こんなに姿勢が違うのかと。
面白かったのが、馬場で乗り方を変える騎手がいることです。横山和生騎手は芝だと12.1%なのにダートでは7.1%。松山弘平騎手は逆で、ダート13.1%に対して芝は9.7%。同じ人でも、馬場が変わると別人みたいに積極性が動く。これは馬の脚質だけでは説明がつかないですよね。
コース別に見ると、もっとくっきりします。札幌の芝1500メートルでは横山和生騎手が26.4%。4回に1回は先頭に立っている計算です。「このコースはこの騎手が行く」というのが、数字ではっきり出てくる。ちなみに武豊騎手は全体だと9.8%と目立ちませんが、福島のダート1800では21.4%。ベテランはコースを選んで動いているのかもしれません。
「個性」なのか、その年たまたまなのか
ここでひとつ引っかかりました。逃げ率が高いといっても、その年たまたま逃げ馬に乗る機会が多かっただけかもしれない。来年も同じとは限らないですよね。
なので、期間を前半(2021〜23年)と後半(2024〜26年)で割って、同じ騎手の逃げ率がどれくらい一致するかを見てみました。結果、相関はr=0.637。統計に詳しくない方に雑に言うと、「前半でよく逃げていた騎手は、後半でもやっぱり逃げている」がかなりの確度で当てはまる、ということです。
つまり逃げ率は、その年の偶然ではなく、騎手に染みついた個性でした。ここまで来て、僕はちょっと興奮したんです。だってこれ、予想に使えるじゃないか、と。
「効くはず」が、効かなかった
逃げ率が騎手の再現する個性なら、逃げ馬メーターに「騎手の逃げ率」を一つの材料として足せば、精度が上がるはず。乗り替わりで積極的な騎手に乗り替わった馬を、拾えるようになるはず。そう思って、さっそく組み込んで検証してみました。
過去のデータで学習した騎手の逃げ率を、まだ使っていない別の年に当てはめて、素点に足す。足す量を少しずつ変えながら、予想1位が本当に逃げた率がどう動くかを見ました。
結果は、まったく上がりませんでした。むしろ、ほんの少し下がった。足しても足さなくても、当たる率は3割弱でほぼ動かない。
正直、拍子抜けしました。あれだけきれいに個性が出ていたのに、なんで予想の役に立たないんだ、と。
しばらく考えて、たぶんこういうことかなと思っています。メーターは元々、その馬が過去にどれだけ逃げてきたかを見て点数をつけている。でもその馬の過去の逃げっぷりは、そのとき乗っていた騎手の性格の結果でもあるわけです。つまり「騎手の癖」は、馬の逃げ実績という形で、すでに点数の中に溶け込んでいた。あらためて騎手の逃げ率を足すのは、同じ情報を二度数えることになって、かえってノイズになった。
再現性が高いことと、予想に効くことは、別の話だった。これは正直、やってみるまで分かりませんでした。
それでも、調べてよかった
予想の精度は上がりませんでした。組み込みは見送りです。でも、この分析そのものはやってよかったなと思っています。「逃げる馬は馬で決まる」と思い込んでいたのが、「逃げる騎手ははっきりいる」に変わった。しかも、それは個性として翌年も再現する。この事実が数字で見えただけで、レースを見る目が少し変わりました。
集計の全文はこちらに置きました
この記事では要点だけ書きましたが、ランキングは上位40人、コース別の逃げ職人は35コース、さらに距離帯別・条件別・年別トレンド・頭数別まで、集計の全文を一枚のページにまとめてあります。数字を細かく追いたい方はこちらをどうぞ。
芝とダートで逃げ率が逆転する騎手、特定コースだけ突出して逃げる騎手など、眺めているだけでも発見があります。予想の主役にはならなくても、「この鞍上は前に行きたがる」という肌感覚を、数字で裏打ちする材料にはなるはずです。
※本ページはJRA-VAN/TARGETのデータをAIで集計したもので、結果を保証するものではありません。データはすべてローカルで処理しています。
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