外厩施設まとめ③|外厩は生産者で決まるのか、馬主で決まるのか。数えたら白老ファームの謎が解けた

外厩
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前回、生産者ごとに外厩の預け先を数えました。ノーザンファーム生産馬の95.7%がノーザンF系、社台ファーム生産馬の80.1%が社台F系。同じ社台グループなのに、預け先はまったく交わらない。

書き終えたあとで引っかかったのが、じゃあ馬主はどうなんだろう、という話でした。生産者は馬を作る側で、走らせる馬を持っているのは馬主です。ノーザンファーム生産といっても、走るときの名義はサンデーレーシングだったり個人馬主だったりする。生産者で決まっているように見えて、実は馬主で決まっていたという可能性が残っていました。

というわけで、今度は馬主で数えます。TARGETの成績データから、出走時点の馬主名を引いてきました。全部で2,137馬主。100走以上が445です。

クラブ馬主で、きれいに割れました

出走数の多い順に並べるとこうなります。

# 馬主 出走 ノーザンF系 社台F系 主な預け先
1 社台レースホース 4,965 0.1% 91.7% 山元トレセン 53.7%
2 キャロットファーム 4,698 97.7% 0.8% NFしがらき 47.1%
3 サンデーレーシング 4,680 99.4% 0.1% NFしがらき 49.9%
4 シルクレーシング 4,501 99.7% 0.0% NF天栄 50.8%
5 ゴドルフィン 3,561 0.1% 2.6% ミッドウェイF 41.3%

サンデーレーシングが99.4%、シルクレーシングが99.7%、キャロットファームが97.7%。そして社台レースホースが0.1%。

見事なものです。同じグループの中にあるクラブなのに、預け先が1%も混ざらない。

G1レーシングだけ少し違って、ノーザンF系17.8%・社台F系39.8%と両方に散っています。ここは中間の立ち位置なんでしょうね。

個人名義でも同じことが起きていました。

馬主 出走 ノーザンF系 社台F系 主な預け先
吉田 勝己 2,003 99.5% 0.0% NFしがらき 49.4%
吉田 照哉 1,788 0.0% 90.3% 山元トレセン 51.2%

名前を見れば察しがつくと思いますが、名義ごとにきっちり分かれています。

自分の施設を持っている馬主

生産者のときと同じで、自前の施設を持つ馬主は徹底して集中させます。

馬主 主な預け先 集中度
八木 良司 宇治田原優駿ステーブル 98.3%
カナヤマホールディングス フォレストヒル 97.6%
由井 健太郎 KSトレーニングセンター 94.9%
ミルファーム ミルファーム千葉 87.6%
前田 晋二 大山ヒルズ 87.1%
西山 茂行 西山牧場阿見分場 72.7%

八木良司さんの98.3%が突出しています。宇治田原優駿ステーブルは八木さんが2002年に設立した施設なので、まあ当然といえば当然なんですが、それにしても徹底しています。6年間で放牧を挟んだのが520回、そのうち511回が同じ施設です。

一方で預けている厩舎は34。施設は1つに絞って、厩舎は分散させるという形になっています。

ちなみにこの集中度は「放牧を挟んだ回数」を分母にした数字です。出走数そのものではありません。全出走のうち何割かは放牧を挟まずに次を使うので、そこを混ぜると話がおかしくなります。

で、生産者と馬主、どっちなんでしょう

ここからが本題です。

生産者でも馬主でも系列がきれいに出るということは、両方が同じことを言っているだけかもしれない。ノーザンファーム生産の馬はだいたいノーザン系のクラブに行くので、どちらで切っても同じ答えになってしまう。

そこで、生産者を固定して馬主を動かしてみました。ノーザンファーム生産馬だけを取り出して、馬主ごとに預け先を見ます。

馬主 放牧を挟んだ数 天栄+しがらきの割合
サンデーレーシング 3,447 95.0%
シルクレーシング 2,687 94.8%
キャロットファーム 2,945 93.4%
G1レーシング 309 94.8%
吉田 勝己 1,513 94.4%
上記以外すべて 11,831 85.4%

馬主が誰であっても、93〜95%が天栄かしがらきに行きます。クラブ以外の個人馬主をまとめても85.4%。

つまりノーザンファーム生産馬に関しては、馬主が変わっても行き先はほとんど変わらない。生産者の側で決まっています。

社台ファーム生産馬も同じで、社台レースホース91.5%・G1レーシング86.0%・吉田照哉さん90.1%と、どの名義でも社台F系に行きます。

ところが白老ファームだけ、話が違いました

前回、社台コーポレーション白老ファームだけがノーザンF系39.4%・社台F系38.0%とほぼ半々で、理由が分からないと書きました。

これを馬主別に割ってみたら、あっさり答えが出ました。

白老ファーム生産馬 件数 ノーザンF系 社台F系
シルクレーシング 504 99.2% 0.0%
キャロットファーム 575 92.2% 1.4%
サンデーレーシング 305 95.4% 0.7%
社台レースホース 492 0.6% 91.9%
G1レーシング 558 1.1% 51.4%

きれいに割れています。

白老ファームは両方のクラブに馬を供給していて、シルク・キャロット・サンデー名義になった馬はノーザン系の外厩へ、社台レースホース名義になった馬は社台系の外厩へ行く。生産者レベルで見たときの「半々」は、2つの流れが混ざっていただけでした。

追分ファームも同じで、G1レーシング名義が930件で社台F系42.2%。こちらは社台側の商流に乗っています。

結局どちらが決めているのか

まとめると、こういうことみたいです。

ノーザンファームや社台ファームのように行き先が最初から決まっている生産者では、馬主を変えても答えが変わりません。生産者で決まっているように見えるし、実際そう言って差し支えない。

白老ファームのように両方の商流に馬を出す生産者では、馬主で分かれます。ここでは馬主が決めている。

だから「生産者と馬主のどちらが決めているか」という聞き方自体が、たぶん少しズレていました。決めているのはその馬がどちらの系列の商流に乗ったかであって、生産者と馬主はその同じ流れを別の角度から見ているだけ、ということなんだと思います。

系列に属さない馬主たち

ここまで社台グループの話ばかりでしたが、そうでない馬主のほうが数としては多いです。

馬主 出走 外厩を使う率 利用施設数 41日以上置く率
松本 好雄 3,542 48.7% 57 12.6%
ゴドルフィン 3,561 63.0% 39 11.0%
西山 茂行 2,360 59.4% 27 11.8%
ビッグレッドファーム 3,123 42.1% 26 15.8%

松本好雄さんは57施設を使い分けています。サンデーレーシングが11施設、シルクレーシングが9施設で回しているのと比べると、まったく別の運用です。

決め打ちで回すやり方と、使い分けるやり方。どちらが良いという話ではなくて、系列を持っているかどうかで取れる戦略が違う、ということなんでしょうね。

気になっていること

生産者でも馬主でも、外厩の行き先はほぼ資本のつながりで決まっていました。ここまでは、まあ納得のいく話です。

ただ、実際に馬を預かって「そろそろ放牧に出そう」「もう帰厩させよう」と判断しているのは調教師のはずなんですよね。行き先が決まっているのは分かったけれど、いつ出していつ戻すかまで生産者や馬主が決めているとは思えない。

前回、山元トレーニングセンターと大山ヒルズで短期の使い方が9倍違うという話をしました。あれが施設の性格なのか、預けている厩舎の性格なのか。まだ答えが出ていません(^^ゞ

※ 集計はJRDBの外厩データとTARGET frontier JVの成績データを突き合わせたものです。期間は2021年7月31日から2026年8月9日まで、239,727走。馬主名は出走時点のもので、TARGETの馬マスタにある現在の名義とは異なる場合があります。系列の分類は上位施設のうち確定できた29施設ぶんです。

外厩名鑑 2021-2026|調教師・馬主・生産者はどこに預けているか
JRA全レース23万9,727走から集計した外厩データベース。調教師209人・馬主445・生産者397を名前で検索でき、外厩の利用率、帰厩からレースまでの日数、預け先の集中度で並べ替えられます。

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