前回、外厩施設を数えていて引っかかったことがありました。同じ「外厩」なのに、帰厩してすぐ使う施設と、じっくり置いてから使う施設で運用がまるで違う。山元トレーニングセンターが1.7%、大山ヒルズが15.2%。9倍の開きです。
これ、施設が決めているのか、預ける側が決めているのか。分からないままだったので、今度は預ける側から見てみることにしました。
まずは生産者です。JRDBの外厩データにTARGETの馬マスタを突き合わせて、33,522頭の生産者を引いてきました。生産者は全部で1,508。100走以上ある生産者が397です。
上位を並べたら、いきなり答えが出ました
出走数の多い順に並べるとこうなります。
| # | 生産者 | 産地 | 出走 | 主な預け先 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ノーザンファーム | 安平町 | 29,694 | ノーザンファームしがらき 50.2% |
| 2 | 社台ファーム | 千歳市 | 18,449 | 山元トレーニングセンター 48.7% |
| 3 | 社台コーポレーション白老ファーム | 白老町 | 5,418 | 山元トレーニングセンター 26.8% |
| 4 | 岡田スタツド | 新ひだか町 | 5,215 | ノルマンディーファーム小野町 14.7% |
| 5 | 下河辺牧場 | 日高町 | 4,235 | チャンピオンヒルズ 29.9% |
1位のノーザンファームが29,694走。2位の社台ファームが18,449走。この2つで全体のかなりの部分を占めます。
で、この2つの預け先を系列別に見たら、これがもう、笑ってしまうくらいきれいに割れていました。
| 生産者 | ノーザンF系 | 社台F系 |
|---|---|---|
| ノーザンファーム | 95.7% | 0.0% |
| 社台ファーム | 0.0% | 80.1% |
ノーザンファーム生産の馬が社台F系の外厩に行くことは、6年間でほぼ起きていない。逆もまた同じ。
同じ社台グループなのに、預け先はまったく交わらないんですね。分かっていましたが数字でハッキリしました。
所属で行き先が変わる
もう少し細かく見ると、美浦所属か栗東所属かで預け先が切り替わります。
ノーザンファーム生産馬
- 美浦所属 → ノーザンファーム天栄 8,259件
- 栗東所属 → ノーザンファームしがらき 10,378件
社台ファーム生産馬
- 美浦所属 → 山元トレーニングセンター 4,576件
- 栗東所属 → グリーンウッド・トレーニング 2,622件
天栄は福島、しがらきは滋賀。山元トレーニングセンターは宮城、グリーンウッドは滋賀。東と西に1つずつ持っていて、所属に応じて振り分けている。系列の中で完結する仕組みになっています。
前回「外厩は348あるけれど上位10施設が主戦場」と書きましたが、その上位の顔ぶれがなぜああなるのか、これで見当がつきました。生産の規模がそのまま外厩の規模になっている。
白老ファームだけ、半々でした
ところが例外があって。3位の社台コーポレーション白老ファームです。
| ノーザンF系 | 社台F系 | |
|---|---|---|
| 白老ファーム | 39.4% | 38.0% |
ほぼ半々。美浦所属だと山元トレーニングセンター879件に対しノーザンファーム天栄612件で拮抗、栗東所属だとノーザンファームしがらき746件が最多になります。
ノーザンでも社台でもない、というより両方使う。ここだけ運用が違います。なんでなんでしょうね。生産の規模が中くらいだから枠を融通してもらっている、みたいな事情なのか。データからは読み取れませんでした。
ちなみに4位相当の追分ファームは社台F系40.8%でノーザンF系0.1%。こちらは社台側にはっきり寄っています。ただ栗東所属だとチャンピオンヒルズ490件が最多で、系列外もそれなりに使うようです。
いま、入れ替わりが起きています
栗東側の社台系を年別に追うと、面白いことになっていました。
| 年 | グリーンウッド | 社台ファーム鈴鹿 |
|---|---|---|
| 2022 | 1,295 | (未開設) |
| 2023 | 1,175 | (未開設) |
| 2024 | 1,015 | 149 |
| 2025 | 847 | 528 |
| 2026 | 481 | 450 |
社台ファーム鈴鹿は2024年に開設された施設です。三重県鈴鹿市、直線1,100メートルの坂路を持つとされる大型施設ですね。
その鈴鹿が149件から528件へ伸びる一方で、グリーンウッドは2022年の1,295件から減り続けています。2026年は8月までの数字なので単純比較はできませんが、それでも並びかけている。
主戦場が移りつつある最中、ということみたいです。数年後に同じ集計をしたら、まったく違う絵になっているかもしれません。
自分の施設を持っている生産者
もうひとつはっきり出たのが、自前の施設を持つ生産者の集中ぶりです。
| 生産者 | 主な預け先 | 集中度 |
|---|---|---|
| ミルファーム | ミルファーム千葉 | 89.0% |
| ノースヒルズ | 大山ヒルズ | 73.1% |
| チャンピオンズファーム | チャンピオンヒルズ | 71.2% |
| ビッグレッドファーム | ビッグレッドファーム鉾田 | 52.3% |
ミルファームに至っては、6年間で使った施設が7つしかありません。ほぼ自前で完結しています。
使う回数が少ないのに、置く期間は長い
ビッグレッドファームの数字が独特でした。放牧を挟む率が42.5%で、これは上位生産者の中では最も低い部類です。ところが41日以上置く比率は13.1%で、こちらは高いほう。
使う回数は少ないけれど、使うときは長い。
同じことが金石牧場(35.2%)や荻伏三好フアーム(37.4%)にも出ていて、この3つはいずれもビッグレッドファーム鉾田を主な預け先にしています。施設の性格が生産者の運用に反映されているのか、その逆なのか。ここも順番は分かりませんでした。
産地でも差が出ました
生産者を産地でまとめると、これも割れます。
| 産地 | 出走 | 外厩を挟む率 | 41日以上置く率 |
|---|---|---|---|
| 安平町 | 33,350 | 70.3% | 4.8% |
| 白老町 | 5,686 | 66.6% | 4.8% |
| 千歳市 | 18,462 | 62.5% | 6.4% |
| 新ひだか町 | 49,825 | 54.9% | 11.3% |
| 浦河町 | 42,165 | 53.3% | 11.5% |
| 新冠町 | 34,099 | 53.5% | 11.6% |
安平町・千歳市・白老町、つまり社台グループの本拠がある地域は、外厩をよく使って短く回す。対して日高地区は、外厩を使う頻度が低くて置く期間が長い。
ただ、これは育成の考え方の違いというより、預託先の資本関係がそのまま出ているだけだと思います。系列の施設を持っている側は回転が速くなる。それだけの話かなと。優劣の話にすると読み違えます。
分かったこと
前回残した「運用の違いはどこから来るのか」という問いには、生産者側からひとつ答えが出ました。外厩の地図は、資本の地図とほぼ同じです。ノーザンはノーザンへ、社台は社台へ。自前の施設を持つ生産者はそこに集める。
ただ、そう書いてから気づいたことがあって。
生産者は馬を作る側であって、走らせる馬を持っているのは馬主なんですよね。ノーザンファーム生産の馬といっても、走るときの名義はサンデーレーシングだったり個人馬主だったりいろいろです。生産者の系列で決まっているように見えて、実は馬主の側で決まっているのかもしれない。
そのへんも数えてみないと分からないなと思いました(^^ゞ
※ 集計はJRDBの外厩データとTARGET frontier JVの馬マスタを突き合わせたものです。期間は2021年7月31日から2026年8月9日まで、239,727走・33,522頭。系列の分類は上位施設のうち確定できた29施設ぶんなので、日高地区の中小施設を中心に使う生産者は「未確認」の比率が高くなります。
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