前回、外厩の情報は馬券に効かないという結論になりました。人気を揃えると複勝率がほとんど変わらない。5つの切り口を試して、残ったのは在厩日数ひとつだけ。それも減点方向にしか使えませんでした。
ただ、書き終えたあとに引っかかっていたことがあります。帰厩してから13日以内にレースを使う馬のことです。
その馬、一週前の追い切りをどこで消化しているんでしょう。
まだ外厩にいるはずなんですよね。だとすると、トレセンの調教データには一週前の時計が残っていないことになります。
追い切りは水曜と木曜が本体です
まず前提の確認から。
今週分の外厩データには、その馬の最終追い切り日が入っています。977頭ぶんを曜日で数えるとこうなりました。
| 曜日 | 頭数 | |
|---|---|---|
| 水曜 | 895 | 92% |
| 木曜 | 34 | 3% |
| 土曜 | 16 | 2% |
| 金曜 | 14 | 1% |
| 火曜 | 12 | 1% |
| 日曜 | 6 | 1% |
92%が水曜。木曜を足すと95%です。追い切りは水木が本体で、それ以外の曜日の時計は参考値、というのは実際そのとおりでした。
そして調教を評価するとき、普通は「レース週の水木」と「一週前の水木」の2本を見ます。今週上げてきたのか、一週前に強く追って今週は流したのか。その組み合わせで仕上がりを読む。
つまり一週前の水木が取れているかどうかは、判断材料の量に直結します。
帰厩13日以内の馬は、材料が半分でした
在厩日数ごとに、レース週と一週前の水木にどれだけ追い切りがあったかを数えました。
| 在厩日数 | 頭数 | 0本 | 1本 | 2本以上 | 平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10-13日 | 10,085 | 19.8% | 49.8% | 30.4% | 1.11本 |
| 14-20日 | 36,595 | 10.2% | 13.2% | 76.5% | 1.66本 |
| 21-30日 | 56,405 | 8.6% | 14.6% | 76.9% | 1.68本 |
| 31日以上 | 33,721 | 10.2% | 18.9% | 70.9% | 1.61本 |
| 在厩継続 | 71,369 | 14.8% | 52.8% | 32.4% | 1.18本 |
帰厩13日以内の馬は、2本以上取れているのが30.4%しかありません。半分近く(49.8%)は1本だけ。平均1.11本です。
在厩14日以上だと2本以上が7割を超えるので、明確に違います。
理由は単純で、一週前の水曜にはまだ外厩にいたからです。帰厩13日以内なら、レース週の水曜(3日前)は間に合っても、一週前の水曜(10日前)には物理的に間に合いません。
予想外だったのは、在厩継続の馬も同じ形だったことです。放牧を挟んでいないのに1本以下が67.6%。こちらは理由が違って、前走からの間隔が平均21日なので、一週前の水曜がまだ前走から1週間後にあたるんですね。そこで強い追い切りはしない。
材料が薄くなる理由は逆なのに、結果は同じでした。
ここで、もうひとつの問題に気づきました
材料が薄い馬がいるのは分かった。じゃあその馬たちは、本当に追い切っていないんでしょうか。
JRA-VANのデータを使っている方はご存知だと思いますが、調教のタイム計測は坂路とウッドチップコースだけです。2021年以降のデータで坂路が264万本、ウッドが76万本。芝もダートもポリトラックも、数字としては入ってきません。
つまり芝で追った馬、ダートで追った馬は、データ上「調教していない」ように見えてしまうんです。
これが厄介で、僕は自分で調教の変化を見るツールを作っているんですが、そこでずっと引っかかっていました。「この馬、直前2週の追い切りが1本もない」と出たとき、それが本当に追っていないのか、計測外のコースで追ったのか区別できない。
外厩データには、どこで追ったかが入っていました
で、今回届いた詳細版のデータを解読していて気づいたんです。最終追い切り日の隣に、2桁のコード が入っている。
これが何なのか分からなかったので、実際の調教データと突き合わせてみました。
| コード | 突き合わせた結果 |
|---|---|
| 01 | 美浦・坂路(102件すべて一致) |
| 11 | 栗東・坂路(225件すべて一致) |
| 02 | 美浦・ウッド |
| 12 | 栗東・ウッド |
| 21〜25 | 北海道の競馬場(ダート・ウッド・芝) |
| 18 | 障害 |
1桁目が場所、2桁目がコース。100%対応しました。
そして重要なのがここで、21〜25や18のコードが付いている馬は、JRA-VANの調教データには時計が入ってきません。函館や札幌の競馬場で追った馬、障害コースで追った馬です。
今週分の977頭で数えると、札幌競馬場のコースで追った馬が287頭いました。全体の29%です。
もちろんこれは札幌開催がある週だからで、いつも3割ということではありません。ただ、開催によってはこれだけの馬が「坂路でもウッドでもない場所」で追っている。
これまで「調教が消えた」と思っていた馬のかなりの部分は、単に計測外だっただけでした。
ただし、本数の多さは成績と関係ありません
ここで一応、確かめておきたいことがありました。追い切りの本数が多い馬は走るのか。
| 人気帯 | 水木追切 | 頭数 | 複勝率 |
|---|---|---|---|
| 1-3番人気 | 0本 | 7,398 | 52.3% |
| 1-3番人気 | 1本 | 15,368 | 53.8% |
| 1-3番人気 | 2本以上 | 29,283 | 53.1% |
| 7番人気以下 | 0本 | 21,222 | 7.9% |
| 7番人気以下 | 1本 | 41,453 | 7.4% |
| 7番人気以下 | 2本以上 | 71,055 | 7.7% |
差は最大1.6ポイントで、方向も揃いません。
本数が少ないことは「走らない」を意味しない。当たり前といえば当たり前で、追い切り1本で仕上がる馬もいれば2本必要な馬もいます。
だから本数は、馬の評価そのものではないんです。こちらが判断できる材料の量の話でした。
同じ「自己ベスト更新」でも意味が違う
これに気づいて、自分の調教ツールに表示を足してみました。レース週と一週前の水木に何本の追い切りがあったか、という表示です。判定には使わず、根拠の横に出すだけ。
過去の週で試したところ、注目馬として拾った35頭のうち9頭(26%)が1本しかありませんでした。
同じ「自己ベスト更新」でも、2本から選んだ最速と、1本しかない時計では意味が違います。後者は比べる相手がいないまま「ベスト」と言っているだけかもしれない。
判定を変えたわけではありません。数字の確からしさが見えるようにしただけです。でもこれ、けっこう気持ちが変わりまして。「ベスト更新」というバッジを、以前より慎重に見るようになりました。
予想材料ではなく、信頼度の物差しでした
6本かけて外厩データを触ってきて、最後にたどり着いたのはここでした。
外厩データは、予想材料ではなく、調教データをどこまで信じていいかを測る物差しだった。
帰厩したばかりの馬は材料が薄い。計測外のコースで追った馬は時計が出ない。どちらも「調教が良い・悪い」の話ではなく、「そもそも判断できるだけの材料があるか」の話です。
複勝回収率100%を探していたときには見つからなかったものが、見る角度を変えたら出てきた。まあ、遠回りではありましたが(^^ゞ
※ 集計はJRDBの外厩データ、TARGET frontier JVの成績データ、および自分で作った調教データベースを突き合わせたものです。期間は2021年7月31日から2026年8月9日まで、239,727走。曜日と追切コースの集計は2026年8月15日・16日分の977頭を使いました。調教ツールは個人使用を目的に作ったもので、データはすべてPC内で完結しています。
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