シリーズの1本目で、外厩施設を数えていて引っかかったことを書きました。帰厩してから13日以内に使う割合が、山元トレーニングセンターは1.7%、大山ヒルズは15.2%。9倍の開きがある。同じ「外厩」なのに使われ方がまるで違う。
これが施設の性格なのか、預けている厩舎の性格なのか。2本目で生産者を、3本目で馬主を数えましたが、どちらも「どこに預けるか」の話であって、「いつ出していつ戻すか」の答えにはなりませんでした。
放牧に出すタイミングを決めているのは、たぶん調教師です。というわけで4本目は調教師で数えます。339人ぶん。
3つの軸で、まったく違う顔が出る
調教師の外厩の使い方は、3つの軸で見ると分かりやすくなりました。どれだけ使うか、短く回すか長く置くか、1つの施設に集中するか使い分けるか。
まず、どれだけ使うか。
| 調教師 | 所属 | 外厩を使う率 |
|---|---|---|
| 木村 哲也 | 美浦 | 89.0% |
| 萩原 清 | 美浦 | 79.0% |
| 鈴木 伸尋 | 美浦 | 78.0% |
| (中略) | ||
| 川村 禎彦 | 栗東 | 25.4% |
木村哲也厩舎は前走のあと放牧を挟む率が89.0%。ほぼ毎回どこかに出しています。対して川村禎彦厩舎は25.4%。4回に1回です。
次に、集中か分散か。
| 調教師 | 主な預け先 | 集中度 | 使った施設数 |
|---|---|---|---|
| 鈴木 伸尋 | ブルーステーブル | 89.4% | 17 |
| 木村 哲也 | ノーザンファーム天栄 | 83.9% | 15 |
| 森 秀行 | チャンピオンヒルズ | 83.0% | 8 |
| 畑端 省吾 | ノーザンファームしがらき | 14.7% | 53 |
森秀行厩舎は6年間で8施設しか使っていません。それでチャンピオンヒルズが83.0%。ほぼ決め打ちです。
逆に畑端省吾厩舎は53施設。最多のしがらきでも14.7%で、残りは細かく散っています。同じ「外厩を使う」でも、やっていることが違いすぎます。
そして3つめ、回転の速さ。
| 調教師 | 帰厩13日以内に使う率 |
|---|---|
| 本田 優 | 43.7% |
| 中竹 和也 | 36.9% |
| 清水 久詞 | 32.5% |
| (中略) | |
| 久保田 貴士 | 0.1% |
| 笹田 和秀 | 0.0% |
本田優厩舎が43.7%で、笹田和秀厩舎が0.0%。笹田厩舎は425回外厩を使っていますが、そのうち帰厩13日以内に使ったのはゼロです。
で、9倍の差はどっちなんでしょう
ここからが本題です。
本田優厩舎の主な預け先は宇治田原優駿ステーブルで72.0%。中竹和也厩舎は大山ヒルズで77.2%。どちらも短期の使い方が多い施設です。つまり短期で使う調教師が、短期で使う施設に預けているだけかもしれない。それなら決めているのは施設のほうです。
そこで、施設を固定して調教師を動かしてみました。同じ施設に80件以上預けている調教師だけを取り出して、短期率を比べます。
| 施設 | 調教師の人数 | 最高 | 最低 | ばらつき |
|---|---|---|---|---|
| 宇治田原優駿ステーブル | 28 | 浅見秀一 60.2% | 笹田和秀 0.0% | 14.2pt |
| 大山ヒルズ | 19 | 清水久詞 44.0% | 佐々木晶 0.0% | 12.8pt |
| チャンピオンヒルズ | 42 | 清水久詞 44.0% | 西園正都 0.0% | 8.5pt |
| ノーザンファーム天栄 | 36 | 和田正一 9.4% | 上原佑紀 0.0% | 2.5pt |
| 山元トレーニングセンター | 36 | 杉浦宏昭 5.0% | 久保田貴 0.0% | 1.3pt |
宇治田原優駿ステーブルは、同じ施設なのに0%から60.2%まで開きます。施設が決めているなら、こんなに開くはずがありません。
ところが山元トレーニングセンターは違って、36人いる中で最高が5.0%。誰が預けても短期にならない。ばらつきも1.3ptしかありません。
清水久詞厩舎が答えを出してくれました
もっとはっきりしたのが、逆から見たときです。清水久詞厩舎は6施設に預けているので、施設ごとの短期率を並べてみました。
| 預け先 | 件数 | 帰厩13日以内 |
|---|---|---|
| チャンピオンヒルズ | 468 | 206件 = 44.0% |
| 大山ヒルズ | 284 | 125件 = 44.0% |
| グリーンウッド・トレーニング | 89 | 32件 = 36.0% |
| フォレストヒル | 75 | 22件 = 29.3% |
| 吉澤ステーブルWEST | 63 | 8件 = 12.7% |
| ノーザンファームしがらき | 241 | 12件 = 5.0% |
チャンピオンヒルズと大山ヒルズがどちらもぴったり44.0%。これは偶然です(206/468と125/284)が、並べて見ると清水厩舎の方針がよく分かります。
しかも清水久詞厩舎は、チャンピオンヒルズでも大山ヒルズでもグリーンウッドでも、その施設に預けている調教師の中で最も短期率が高い。どこに行っても自分のやり方を通しています。
対照的なのが手塚貴久厩舎です。
| 預け先 | 件数 | 帰厩13日以内 |
|---|---|---|
| ノーザンファーム天栄 | 556 | 19件 = 3.4% |
| 阿見トレーニングセンター | 143 | 2件 = 1.4% |
| 吉澤ステーブルEAST | 64 | 1件 = 1.6% |
| 山元トレーニングセンター | 96 | 1件 = 1.0% |
4施設とも1%台から3%台。どこに預けても短期にしない。
というわけで、1本目の宿題に答えが出ました。短く使うか長く置くかは、施設ではなく調教師が決めています。
ただし、施設側にも壁があります
とはいえ、そう単純でもなくて。
さっきの表で気になるのが、清水久詞厩舎のノーザンファームしがらきです。他の施設では30〜44%なのに、しがらきだけ5.0%。241件も預けていて短期は12件しかない。
どこに行っても自分のやり方を通す調教師が、しがらきでだけ通せていない。
山元トレーニングセンターも同じで、36人いて最も高い杉浦宏昭厩舎が119件中6件の5.0%。それ以外は全員4%台以下です。ノーザンファーム天栄も最高9.4%。この2つの施設は、そもそも短期で戻すという使い方をさせないらしい。
理由はデータからは分かりません。仕上げの方針なのか、預託の契約の話なのか。ただ、施設によって「調教師の裁量が効く施設」と「効かない施設」があるのは確かなようです。
宇治田原のばらつきが14.2ptで山元トレセンが1.3pt。この差が、そのまま裁量の幅なんだと思います。
施設の側から見ると
最後に、外厩から見た厩舎の依存度も出しておきます。
| 外厩 | 主力の厩舎 | その厩舎の外厩利用に占める比率 |
|---|---|---|
| ノーザンファーム天栄 | 木村 哲也 | 83.9% |
| ノーザンファームしがらき | 池添 学 | 67.6% |
| 山元トレーニングセンター | 加藤 征弘 | 24.5% |
| グリーンウッド・トレーニング | 藤岡 健一 | 29.4% |
ノーザン系は、厩舎の側から見ても依存度が高い。木村哲也厩舎は外厩を使うとき8割以上が天栄です。一方で山元トレーニングセンターやグリーンウッドの主力厩舎は24〜29%で、他の施設と併用しています。
同じ「主力厩舎」でも関係の深さが違うんですね。
ここまでで分かったこと
生産者と馬主で預け先が決まり、調教師でタイミングが決まる。役割がきれいに分かれていました。
外厩の地図はだいたい描けた気がします。348施設あって、上位10で半分。ノーザンはノーザンへ、社台は社台へ。短く回すか長く置くかは調教師次第で、ただし施設によっては裁量が効かない。
で、ここまで書いてきて、そろそろ聞かれそうだなと思っていることがあります。
それで、馬券には効くんですか。
「天栄帰り」と聞くと買いたくなりますし、実際そういう言われ方をします。ただ、ここまで数えてきて分かったのは、外厩の行き先が資本のつながりで決まっているということでした。天栄に行く馬は、天栄だから走るのか、それとも最初から走る馬が天栄に行っているのか。
そこを切り分けないと、たぶん盛大に間違えます。数えてみるつもりです(^^ゞ
※ 集計はJRDBの外厩データとTARGET frontier JVの成績データを突き合わせたものです。期間は2021年7月31日から2026年8月9日まで、239,727走。短期率などの分母は「放牧を挟んだ回数」で、出走数ではありません。施設ごとの比較は各80件以上(大山ヒルズのみ50件以上)預けている調教師に絞っています。
コメント