11月1日、東京芝2000mの天皇賞(秋)。今年はクロワデュノールとマスカレードボールの2強対決だと僕は見ています。
実績ならクロワデュノールが上です。ホープフルS、ダービー、大阪杯、天皇賞(春)とJRAのG1を4勝。マスカレードボールのG1は去年の天皇賞(秋)だけです。直接対決もクロワデュノールの3勝1敗。それでも、マスカレードボールの終いの切れはクロワデュノールより上だと思っています。スタートが良くて終いもしっかり伸びるクロワデュノールと、出は今ひとつでも最後の脚で勝負するマスカレードボール。流れ次第で逆転もあるけれど、6対4でクロワデュノールが有利かな、というのが今の感覚です。
この2強で決まるのか、それとも第3の刺客がいるのか。TARGETのデータで、持ち時計、上がり、速度、PCIと、いくつかの角度から見てみました。
2強のプロフィール
| クロワデュノール | マスカレードボール | |
|---|---|---|
| 年齢・厩舎 | 4歳・栗東 斉藤崇史 | 4歳・美浦 手塚貴久 |
| JRA成績 | 9戦6勝 | 8戦4勝 |
| JRAのG1 | 4勝(ホープフルS・ダービー・大阪杯・天皇賞春) | 1勝(天皇賞秋) |
| 海外 | プランスドランジュ賞1着、凱旋門賞14着 | QE2世C 2着、キングジョージ7着 |
| 前走 | 宝塚記念2着(6月14日) | キングジョージ7着(7月25日) |
| 東京芝2000m | 出走なし | 1戦1勝(去年の天皇賞秋) |
直接対決はクロワデュノールの3勝1敗
| レース | クロワデュノール | マスカレードボール |
|---|---|---|
| 2024 ホープフルS | 1着 | 11着 |
| 2025 皐月賞 | 2着 | 3着 |
| 2025 ダービー | 1着 | 2着 |
| 2025 ジャパンカップ | 4着 | 2着 |
ただ、マスカレードボールが勝った1回は一番最近のジャパンカップです。春のクラシックではクロワデュノールが前にいましたが、古馬になってからの対戦はまだ1回しかありません。
観点1 持ち時計
登録17頭の、芝2000mの最速タイムを速い順に並べました。
| 馬名 | 芝2000m最速 | レース | 東京芝2000m |
|---|---|---|---|
| ホウオウビスケッツ | 1:56.6 | 2025 大阪杯(5着) | 1:57.6 |
| リアライズシリウス | 1:56.7 | 2026 皐月賞(2着) | – |
| コスモキュランダ | 1:56.8 | 2025 大阪杯(8着) | 1:59.2 |
| クロワデュノール | 1:57.3 | 2025 皐月賞(2着) | – |
| マスカレードボール | 1:57.3 | 2025 皐月賞(3着) | 1:58.6 |
| ジョバンニ | 1:57.4 | 2025 皐月賞(4着) | – |
| レディネス | 1:57.5 | 2026 白富士S(4着) | 1:57.5 |
| シェイクユアハート | 1:57.6 | 2025 中日新聞杯(1着) | – |
| レガレイラ | 1:57.6 | 2024 皐月賞(6着) | – |
| ダノンデサイル | 1:57.9 | 2026 大阪杯(3着) | – |
| タガノデュード | 1:57.9 | 2026 大阪杯(4着) | – |
| セイウンハーデス | 1:58.0 | 2026 大阪杯(5着) | 1:59.0 |
| ジュンブロッサム | 1:58.2 | 2026 オクトーバーS(3着) | 1:58.2 |
| サクラファレル | 1:58.6 | 2026 東京の特別戦(1着) | 1:58.6 |
| ネブラディスク | 1:59.4 | 2025 京都の平場戦(2着) | – |
| シャンパンカラー | 2:03.0 | 2023 京成杯(6着) | – |
| エルトンバローズ | – | 芝2000mの出走なし | – |
2強はどちらも1分57秒3。同じ2025年の皐月賞で、クロワデュノールが2着、マスカレードボールが3着だったときの時計です。持ち時計では差がつきません。
上にいるのは、逃げて速い流れを作るホウオウビスケッツと、今年の皐月賞でロブチェンの2着だった3歳馬リアライズシリウス。ただ持ち時計は「そのときの馬場と流れ」で大きく変わる数字なので、これだけで序列は決められません。
気になるのは、クロワデュノールが東京芝2000mを一度も走っていないことです。東京ではダービーを勝っていますし、1800mの東京スポーツ杯2歳Sも勝っているので、コースが合わないとは思いません。それでも「去年このコースを勝っている」マスカレードボールとは経験の差があります。
観点2 上がり3F
| 馬名 | 芝1800m以上の上がり最速 | 近5走の上がり平均 |
|---|---|---|
| マスカレードボール | 32.3(2025 天皇賞秋) | 33.4 |
| シャンパンカラー | 33.5 | 33.4 |
| ジュンブロッサム | 32.0 | 33.7 |
| エルトンバローズ | 33.3 | 34.0 |
| クロワデュノール | 33.3(2024 東スポ杯2歳S) | 34.7 |
| ダノンデサイル | 33.5 | 34.9 |
ここははっきり差が出ました。マスカレードボールは近5走の上がり平均が33秒4。クロワデュノールは34秒7。平均で1秒3の差があります。G1に限ると、クロワデュノールが33秒台の上がりを使ったことは一度もありません。終いの切れはマスカレードボールが上、という見立てはデータでもその通りです。
ここで大事なのは、過去20年の天皇賞(秋)の勝ち馬20頭のうち16頭が、上がり3位以内だったこと。東京の長い直線では、最後に脚を使える馬が勝っています。
観点3 速度と位置取り
上がり3Fを時速に直すと、マスカレードボールの32秒3は時速約66.9km、クロワデュノールの近走平均34秒7は時速約62.2km。同じ600mを走ったとして、ゴールでは1秒以上の差になります。
それでもクロワデュノールが勝ってきたのは、位置取りで先に貯金を作っているからです。近5走で4コーナーを回ったときの位置を「頭数のうち前から何割のところにいたか」で表すと、クロワデュノールは0.22(18頭立てならおよそ4番手)、マスカレードボールは0.51(およそ9番手)。前で運んでそのまま押し切るクロワデュノールと、中団から脚を伸ばすマスカレードボール。勝ち方の形がまったく違います。
2強の戦い方
クロワデュノール:スタートが良く、4コーナーで前から4番手前後。上がりは34秒台でも、位置の分だけ先にゴールに近い。
マスカレードボール:4コーナーで中団。そこから32〜33秒台の脚で前をのみ込む。
どちらが先にゴールするかは、「前の貯金」と「後ろの脚」の引き算です。そしてその引き算を決めるのが、レースの流れです。
観点4 PCIで見るレースの流れ
PCIは、レースの前半と後半のどちらに力を使ったかを表す数字です。50くらいがイーブンで、数字が大きいほど前半がゆっくりで後半に速い脚を使った(後傾)、小さいほど前半から飛ばした(前傾)レースになります。RPCIはそのレース全体の流れです。
| 年 | 勝ち馬 | 時計 | 上がり | 勝ち馬PCI | RPCI | 4角 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2016 | モーリス | 1:59.3 | 33.8 | 60.6 | 57.7 | 4番手 |
| 2017 | キタサンブラック | 2:08.3 | 38.5 | 46.6 | 45.3 | 2番手 |
| 2018 | レイデオロ | 1:56.8 | 33.6 | 56.8 | 50.4 | 5番手 |
| 2019 | アーモンドアイ | 1:56.2 | 33.8 | 54.1 | 50.5 | 5番手 |
| 2020 | アーモンドアイ | 1:57.8 | 33.1 | 62.7 | 59.0 | 4番手 |
| 2021 | エフフォーリア | 1:57.9 | 33.2 | 62.2 | 59.2 | 6番手 |
| 2022 | イクイノックス | 1:57.5 | 32.7 | 65.2 | 37.2 | 9番手 |
| 2023 | イクイノックス | 1:55.2 | 34.2 | 49.1 | 45.7 | 3番手 |
| 2024 | ドウデュース | 1:57.3 | 32.5 | 66.3 | 57.2 | 13番手 |
| 2025 | マスカレードボール | 1:58.6 | 32.3 | 70.8 | 66.0 | 8番手 |
去年のRPCIは66.0。過去20年でいちばんの超スローでした。前半3Fが37秒1という遅い流れで、最後は上がり勝負。マスカレードボールの32秒3が一番生きる展開だったことになります。
一方で、2023年のイクイノックスは1分55秒2のレコード。RPCI45.7の速い流れを3番手から押し切りました。流れが速くなれば、前で運んで長く脚を使える馬が有利になります。
2強の近5走のPCI平均は、クロワデュノールが53.2、マスカレードボールが60.9。クロワデュノールは平均的な流れで前から押し切るタイプ、マスカレードボールは後半の瞬発力で勝負するタイプ、という数字です。
今年はどんな流れになりそうか
近5走で4コーナーをいちばん前で回っているのはホウオウビスケッツ(位置0.09)。毎日王冠でも逃げて2着でした。続いてサクラファレル、セイウンハーデス(ともに0.15)、リアライズシリウス(0.16)と、前に行きたい馬がそろっています。去年ほどのスローにはなりにくい、というのが僕の読みです。
流れが平均より速くなればクロワデュノール、去年のような上がり勝負になればマスカレードボール。逆転があるとすれば、スローの瞬発力勝負になったときです。
観点5 過去20年の天皇賞(秋)
| 項目 | 結果(2006〜2025年) |
|---|---|
| 1番人気 | 11勝・2着3回・3着2回 |
| 2番人気 | 2勝・2着4回・3着5回 |
| 1・2番人気がそろって3着以内 | 20回中7回 |
| 1・2番人気で1・2着 | 20回中2回(2008年、2017年) |
| 年齢別の勝利 | 3歳3勝、4歳7勝、5歳9勝、6歳以上1勝(105頭) |
| 勝ち馬の前走 | 毎日王冠6勝、宝塚記念5勝、ダービー3勝ほか |
1番人気は20回で11勝。G1の中でも、1番人気がよく勝つレースです。クロワデュノールが1番人気になるなら、これは素直に追い風です。
ただ、2強で1・2着が決まったのは20年で2回しかありません。2008年のウオッカとダイワスカーレット、2017年のキタサンブラックとサトノクラウン。どちらか1頭は勝っても、もう1頭が崩れるか、間に別の馬が入ることのほうがずっと多いレースです。
前走は、宝塚記念からの直行組が2017年、2023年、2024年と最近よく勝っています。クロワデュノールは宝塚記念2着からの直行で、この形に当てはまります。毎日王冠組は6勝していますが、最後に勝ったのは2014年のスピルバーグです。
年齢では6歳以上が105頭で1勝だけ。2強はどちらも4歳です。
第3の刺客はいるか
ダノンデサイル(5歳)
2024年のダービー馬で、2025年にはドバイシーマクラシックも勝っています。JRAのG1では3着が5回。有馬記念、ジャパンカップ、大阪杯、宝塚記念と、強い相手にずっと崩れずに走っています。今年の宝塚記念ではクロワデュノールと0.4秒差の3着。勝ち切れないのが弱みですが、2強のどちらかが崩れたときに、いちばん近くにいる馬です。
リアライズシリウス(3歳)
今年の皐月賞2着で、そのときの1分56秒7は2強の持ち時計より0.6秒速い時計です。3歳馬は斤量が56kgで、2強より2kg軽くなります。過去20年で3歳馬は3勝(2021年エフフォーリア、2022年イクイノックス、2025年マスカレードボール)していて、最近は3歳の勝ちが目立ちます。不安は前走の毎日王冠で1番人気7着だったこと。ダービーも7着で、皐月賞の走りをもう一度見せられるかどうかです。
ホウオウビスケッツ(6歳)
2024年の天皇賞(秋)で8番人気3着。今年の毎日王冠も逃げて2着でした。芝2000mの持ち時計1分56秒6は登録馬で一番です。6歳以上の勝利が過去20年で1回しかないのは向かい風ですが、3着までなら十分ある馬です。ペースを作る馬なので、この馬の逃げ方がレース全体を決めます。
レガレイラ(5歳牝馬)
ホープフルS、有馬記念、エリザベス女王杯とG1を3勝。2強以外で、G1をいちばん多く勝っている馬です。ただ今年は宝塚記念7着、オールカマー4着と、去年ほどの勢いがありません。
登録17頭の評価
| 馬名 | 年齢 | 良い材料 | 不安な材料 |
|---|---|---|---|
| クロワデュノール | 4 | JRAのG1を4勝、直接対決3勝1敗。前で運べる | 東京芝2000mは初めて。G1の上がりは34秒台 |
| マスカレードボール | 4 | 去年の勝ち馬。上がり32秒3は登録馬で一番の切れ | スタートが遅く、速い流れで前に残られると届かない恐れ |
| ダノンデサイル | 5 | ダービー、ドバイSCを勝利。G1で崩れない | JRAのG1は3着が5回と勝ち切れない |
| リアライズシリウス | 3 | 皐月賞1分56秒7。斤量56kg | ダービー7着、毎日王冠7着と近2走が案外 |
| ホウオウビスケッツ | 6 | 2024年3着。持ち時計1分56秒6 | 去年は13着。6歳以上は勝ちが少ない |
| レガレイラ | 5 | G1を3勝 | 今年は宝塚記念7着、オールカマー4着 |
| ジョバンニ | 4 | チャレンジC1着、金鯱賞と小倉記念で2着。香港のQE2世C5着 | G1は勝っていない |
| セイウンハーデス | 7 | 今年の毎日王冠1着。去年の天皇賞秋で上がり32秒4 | 7歳。過去20年、7歳以上の勝ちは2009年カンパニーだけ |
| シェイクユアハート | 6 | 金鯱賞、札幌記念と今年G2を2勝 | 宝塚記念14着。東京は未出走 |
| サクラファレル | 4 | 札幌記念2着。東京芝2000mで勝ちがある | G1は初めて |
| レディネス | 4 | 札幌記念3着、毎日王冠3着。東京芝2000m1分57秒5 | 重賞はまだ勝っていない |
| タガノデュード | 5 | 今年の大阪杯で13番人気4着 | 前走のチャレンジC11着 |
| コスモキュランダ | 5 | 芝2000m1分56秒8。去年の有馬記念2着 | 前走のオールカマー11着 |
| ジュンブロッサム | 7 | 上がり32秒0の切れ。オクトーバーS3着 | 2000mの重賞経験が少ない |
| エルトンバローズ | 6 | しらさぎS1着。毎日王冠を2023年に勝利 | 芝2000mは未出走 |
| シャンパンカラー | 6 | 2023年NHKマイルCの勝ち馬。上がりの平均は速い | 芝2000mは3歳1月の京成杯だけ |
| ネブラディスク | 4 | 9戦4勝で、博多Sを勝って上がってきた | 重賞は未勝利 |
特別登録の時点。斤量は3歳56kg、4歳以上の牡馬58kg、牝馬56kg。
まとめ
| クロワデュノールに向く材料 | マスカレードボールに向く材料 |
|---|---|
| 直接対決3勝1敗 | 上がり平均で1秒3上回る |
| 1番人気は過去20年で11勝 | 去年の勝ち馬で、東京芝2000mの経験がある |
| 宝塚記念からの直行は最近の勝ちパターン | 直接対決は直近のジャパンカップで勝っている |
| 前に行く馬が多く、去年ほどのスローになりにくい | 上がり勝負になれば、切れで逆転できる |
6対4でクロワデュノール有利、という最初の見立ては、データとも大きくずれていないと思います。実績、直接対決、1番人気の強さ、前走のローテーション。どれもクロワデュノールの側にあります。
マスカレードボールが逆転するのは、去年のような上がり勝負になったとき。ホウオウビスケッツが楽に逃げて前半がゆっくり流れれば、32秒台の脚がもう一度生きます。逆に前が速くなれば、クロワデュノールが押し切る形になりやすい。
そして第3の刺客。過去20年で2強が1・2着だったのは2回だけです。2強のどちらかが崩れたとき、そこに入ってくる一番手はダノンデサイル。G1で何度も3着に来ている安定感は、この形のレースでこそ生きると思います。穴なら、持ち時計のあるリアライズシリウスと、流れを作るホウオウビスケッツ。
11月1日、府中の525m。2強が並んで坂を上がってくるのか、それとも別の馬が割って入るのか。
データはTARGET frontier JV(JRA-VANデータ)から集計。成績はJRAのレース(海外成績は表に別記)。PCIはTARGETと同じ式で計算。
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