概要
2025年7月14日と15日に、北海道苫小牧市のノーザンホースパークで「セレクトセール2025」が開催されました。日本競走馬協会(JRHA)が主催するこのセールは、日本最大のサラブレッド競り市であり、厳選された良血馬が上場されることで知られています。1998年の初開催以来、セレクトセールは日本の競走馬市場を活性化し、ディープインパクトなどのG1優勝馬を多数輩出してきました。2025年のセールは、記録的な売上と高い売却率を達成し、国内外からの強い需要を示しました。
1日目: 1歳馬セッション(2025年7月14日)
1歳馬セッションでは、227頭(牡138頭、牝89頭)が上場され、225頭(牡136頭、牝89頭)が売却されました。売却率は99.1%で、過去最高を2%上回る結果となりました。総売上は155億4600万円(税抜)で、セレクトセールの1日としての史上最高売上を記録しました。
1日目の統計
項目 |
牡 |
牝 |
合計 |
---|---|---|---|
上場頭数 |
138 | 89 | 227 |
売却頭数 |
136 | 89 | 225 |
売却率 (%) |
98.6 | 100.0 | 99.1 |
総売上 (円、税抜) |
112億9100万 |
42億5500万 |
155億4600万 |
最高価格 (円、税抜) |
4億2000万 |
2億4000万 |
4億2000万 |
最低価格 (円、税抜) |
800万 |
800万 |
800万 |
平均価格 (円、税抜) |
8302万2059 |
4780万8989 |
6909万3333 |
中央価格 (円、税抜) |
5200万 |
3900万 |
4400万 |
高額落札馬(1日目)
上場番号 |
馬名 |
性別 |
毛色 |
父 |
母 |
売却価格 (円、税抜) |
購買者 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
45 |
モシーンの2024 |
牡 |
青鹿 |
キタサンブラック |
モシーン |
4億2000万 |
ネブラスカレーシング |
86 |
ノームコアの2024 |
牡 |
芦 |
キタサンブラック |
ノームコア |
4億1000万 |
金子真人ホールディングス(株) |
80 |
ラビットランの2024 |
牡 |
鹿 |
キタサンブラック |
ラビットラン |
3億2000万 |
阿部 雅英 |
90 |
ヤンキーローズの2024 |
牡 |
黒鹿 |
サートゥルナーリア |
ヤンキーローズ |
3億1000万 |
(株)ダノックス |
23 |
コンヴィクションⅡの2024 |
牡 |
鹿 |
キタサンブラック |
コンヴィクションⅡ |
3億 |
(株)ダノックス |
注目馬: モシーンの2024
-
血統: 父キタサンブラック、母モシーン(父Fastnet Rock)
-
生年月日: 2024年4月25日
-
生産者: ノーザンファーム
-
落札価格: 4億2000万円(セール史上9位、1歳馬では4位)
-
購買者: ネブラスカレーシング
-
背景: 母モシーンはオーストラリアでG1を4勝した名牝。半姉プリモシーンは2020年東京新聞杯など重賞3勝、半兄ダノンエアズロックは2022年セレクトセールで4億5000万円で落札。
市場の動向
1日目では、キタサンブラック産駒が特に注目を集め、11頭中10頭が1億円以上で落札されました。42頭が1億円を超える価格で取引され、前年比で10頭増加しました。平均価格は6909万円で、前年比6.7%増と、異例の高騰を見せました。
2日目: 当歳馬セッション(2025年7月15日)
当歳馬セッションでは、240頭(牡166頭、牝74頭)が上場され、228頭(牡156頭、牝72頭)が売却されました。売却率は95.0%で、総売上は171億5400万円(税抜)を記録し、単日でのセレクトセール記録を更新しました。
2日目の統計
項目 |
牡 |
牝 |
合計 |
---|---|---|---|
上場頭数 |
166 | 74 | 240 |
売却頭数 |
156 | 72 | 228 |
売却率 (%) |
94.0 | 97.3 | 95.0 |
総売上 (円、税抜) |
135億7900万 |
35億7500万 |
171億5400万 |
最高価格 (円、税抜) |
5億8000万 |
1億7000万 |
5億8000万 |
最低価格 (円、税抜) |
1500万 |
1300万 |
1300万 |
平均価格 (円、税抜) |
8704万4872 |
4965万2778 |
7523万6842 |
中央価格 (円、税抜) |
5800万 |
3800万 |
5000万 |
高額落札馬(2日目)
上場番号 |
馬名 |
性別 |
毛色 |
父 |
母 |
売却価格 (円、税抜) |
購買者 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
344 |
ミッドナイトビズーの2025 |
牡 |
黒鹿 |
イクイノックス |
ミッドナイトビズー |
5億8000万 |
ネブラスカレーシング |
407 |
シンプリーグロリアスの2025 |
牡 |
鹿 |
キタサンブラック |
シンプリーグロリアス |
5億 |
坂口 直大 |
431 |
ゴーイングトゥベガスの2025 |
牡 |
黒鹿 |
イクイノックス |
ゴーイングトゥベガス |
4億5000万 |
小笹 芳央 |
369 |
ファイアバーンの2025 |
牡 |
黒鹿 |
キズナ |
ファイアバーン |
3億2000万 |
国本 哲秀 |
401 |
グローバルビューティの2025 |
牡 |
鹿 |
イクイノックス |
グローバルビューティ |
3億1000万 |
YFホースクラブ |
注目馬: ミッドナイトビズーの2025
-
血統: 父イクイノックス、母ミッドナイトビズー(父Midnight Lute)
-
生年月日: 2025年3月1日
-
生産者: ノーザンファーム
-
落札価格: 5億8000万円(セール史上3位タイ)
-
購買者: ネブラスカレーシング
-
背景: 母ミッドナイトビズーは2019年のエクリプス賞古馬牝馬チャンピオンで、G1を5勝。イクイノックスの初年度産駒として高い期待を集めた。
市場の動向
2日目では、イクイノックス産駒が注目され、44頭が1億円以上で落札されました。これは2023年の記録(35頭)を大幅に更新する結果です。キタサンブラック産駒も引き続き高額取引が続き、市場の活況を牽引しました。
全体の総売上
2日間の総売上は約327億円(税抜)に達し、セレクトセールの史上最高記録を更新したとみられます。過去の記録(例: 1998年の約50億円)から大幅に増加し、日本の競走馬市場の成長と国際的な評価の高まりを反映しています。
主要な購買者
-
ネブラスカレーシング: 両日の最高価格馬(モシーンの2024、ミッドナイトビズーの2025)を落札。JRAに登録された新しい馬主名義で、一部報道ではラウンドワン社長の杉野公彦氏が関連している可能性が指摘されています。
-
金子真人ホールディングス(株): ノームコアの2024(4億1000万円)やサザンスターズの2024(2億7000万円)など、複数の高額馬を落札。
-
(株)ダノックス: ヤンキーローズの2024(3億1000万円)、コンヴィクションⅡの2024(3億円)など、積極的な購買。
-
藤田 晋: フォエヴァーダーリングの2024(3億円)など、DMMドリームクラブのオーナーとして知られる。
市場分析
日本競走馬協会の吉田勝己理事は、セールの成功要因として以下を挙げています:
-
馬の品質の高さ: キタサンブラック産駒(1日目で10/11頭が1億円超)やイクイノックス産駒の高い評価。
-
国際的な需要: 日本の競走馬の管理水準の向上により、海外バイヤーの参加が増加。
-
市場の活性化: 「良い馬はオークションでしか買えない」との認識が広がり、競争が激化。
種牡馬別成績
以下は、1歳馬セッションでの主要種牡馬の取引成績です:
種牡馬 |
上場頭数 |
売却頭数 |
売却率 (%) |
総売上 (円、税抜) |
最高価格 (円、税抜) |
平均価格 (円、税抜) |
---|---|---|---|---|---|---|
キタサンブラック |
11 | 11 | 100.0 |
18億2500万 |
4億2000万 |
1億6590万9091 |
コントレイル |
7 | 7 | 100.0 |
7億9000万 |
2億8000万 |
1億1285万7143 |
サートゥルナーリア |
5 | 5 | 100.0 |
6億2000万 |
3億1000万 |
1億2400万 |
レイデオロ |
4 | 4 | 100.0 |
5億3000万 |
3億 |
1億3250万 |
結論
セレクトセール2025は、記録的な売上と高い売却率を達成し、日本の競走馬市場の強さと国際的な評価の高まりを示しました。キタサンブラックやイクイノックス産駒の人気、ネブラスカレーシングなどの新たな購買者の登場、そして日本の競走馬管理の進化が、セールの成功を支えました。今後もセレクトセールは、国内外の競馬関係者にとって重要な市場として注目されるでしょう。
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