日本の競馬は、昔のようなブームではないけれど、数字を見ると確かに復活しています。
今回、1986年から2025年までのJRA売上、総参加人員、開催場入場人員、芝G1の人気傾向などを見てみました。
最初に結論を書くと、今の競馬人気は90年代の競馬ブームとはかなり違います。
90年代は、競馬場に人が集まり、テレビや新聞でスター馬をみんなで追いかける「来場型の競馬ブーム」でした。
一方、今の競馬は、競馬場に行かなくてもネットで馬券を買い、スマホでレースを見て、SNSで話題を共有する「リモート参加型の競馬市場」になっています。
つまり、売上は戻ってきたけれど、競馬場の人の数は戻っていない。
ここが一番大きな変化だと思います。
JRA売上は1997年がピーク
JRAの売上を見ると、1986年は1.80兆円でした。
そこからどんどん伸びて、1997年には4.00兆円まで増えています。
約2.2倍です。
この時代は、オグリキャップから始まった競馬人気の余熱があり、トウカイテイオー、ナリタブライアン、そして武豊騎手のようなスターがいました。
テレビ、スポーツ新聞、競馬雑誌も強く、競馬がかなり大きな大衆娯楽だった時代ですね。
競馬場にも人が集まりました。
開催場入場人員のピークは1996年で、1,411.7万人でした。売上ピークの1年前です。
つまり90年代後半の競馬ブームは、売上も伸びて、人も競馬場に来ていた時代でした。
2011年に底を打つ
そこからJRA売上は長く下がっていきます。
2011年には2.29兆円まで落ちました。
1997年の4.00兆円から見ると、かなり大きな減少です。
バブル崩壊後の長期停滞、デフレ、娯楽の多様化、人口の高齢化など、いろいろな要因があったと思います。
昔は、週末に競馬場へ行って、現金で馬券を買って、新聞を見ながらレースを楽しむというスタイルでした。
でも、2000年代以降は、ゲーム、ネット、動画、SNS、スマホなど、娯楽が一気に増えました。競馬だけが週末の楽しみではなくなったわけです。
競馬場へ行く人も減りました。
2025年の開催場入場人員は522.98万人です。ピークだった1996年の1,411.7万人と比べると、約63%も少ないです。
ここだけ見ると、競馬人気は戻っていないようにも見えます。
でも売上は戻ってきた
ところが、売上は戻ってきています。
2011年に2.29兆円まで落ちたJRA売上は、その後じわじわ増えて、2025年には3.49兆円まで回復しました。
2011年比で約52%増です。
ただし、1997年の4.00兆円にはまだ届いていません。ピーク比では約13%低いです。
それでも、かなり戻ってきたと言っていいと思います。
面白いのは、入場人員が戻っていないのに売上が戻っていることです。
ここが昔の競馬ブームと今の競馬人気の違いですね。
2025年の総参加人員は2億637万人で、データ上では最高水準になっています。競馬場に来る人は少ないけれど、馬券に参加している人は増えている。
つまり、今の競馬は「現地で見る娯楽」から「ネットで参加する娯楽」に変わったということです。
PATとネット投票が競馬を変えた
この変化を考えると、やはり大きいのはネット投票です。
JRAは電話投票を1974年から導入していますが、2000年代に入ってからは、PCや携帯電話で投票できる環境が広がりました。
2005年には即PATが始まりました。銀行口座と連携して、すぐに馬券を買える仕組みです。
昔なら、馬券を買うには競馬場かWINSへ行く必要がありました。
でも今は、スマホで買えます。
これは大きいですね。
雨でも買える。
移動中でも買える。
家にいても買える。
地方競馬も海外競馬も見られる。
競馬場に行かなくても、競馬に参加できるようになりました。
JRAの売上が戻ってきたのは、競馬場に人が戻ったからではなく、馬券を買う場所がスマホやPCに広がったからだと思います。
90年代のブームとは中身が違う
90年代の競馬ブームは、競馬場やテレビを中心にしたものでした。
オグリキャップが走る。
トウカイテイオーが復活する。
ナリタブライアンが三冠を取る。
武豊騎手がスターになる。
こういう物語を、みんなが同じタイミングで見ていました。
今は少し違います。
レース映像はあとから見られます。
SNSで何度も拡散されます。
海外レースも話題になります。
馬券はネットで買えます。
データもすぐに調べられます。
同じ競馬でも、ファンの参加の仕方が変わっています。
昔は競馬場に集まるブーム。
今はネットで広がるブーム。
そんな感じですね。
G1が荒れたから売上が伸びたわけではない
今回、芝G1の人気傾向も見てみました。
売上が伸びる理由として、「荒れるから面白い」「大穴が出るから売れる」という見方もあります。
でも、データを見ると、G1の人気分布とJRA売上の関係はあまり強くありませんでした。
ピーク期だった1995年から1999年のG1勝ち馬平均人気は3.24です。
極端に荒れていたわけではありません。
1番人気が勝った割合も、上昇期、ピーク期、低迷期、再拡大期で大きく変わっていません。
つまり、競馬の売上は「荒れるかどうか」だけで決まっているわけではないと思います。
むしろ、スター馬がいて、有力馬同士の対決があり、みんながその物語に参加したくなることのほうが大事です。
大穴が出るより、強い馬が強い競馬をする。
そのほうが、長く人気を支えるのかもしれません。
スター馬の存在は今も大きい
競馬人気には、やはりスター馬が必要です。
90年代なら、オグリキャップ、トウカイテイオー、ナリタブライアン。
2000年代なら、ディープインパクト。
近年なら、アーモンドアイ、イクイノックス、ドウデュース、フォーエバーヤングなどですね。
2024年のドウデュースは、天皇賞(秋)とジャパンカップを勝って年度代表馬になりました。
2025年のフォーエバーヤングは、ダート馬として年度代表馬になりました。日本調教馬として海外の大きなダートG1を勝ったこともあり、競馬ファンの見方を少し変えた馬だと思います。
昔のスター馬は、国内のテレビ中継や新聞で共有される存在でした。
今のスター馬は、海外レース、SNS、YouTube、レース映像、二次コンテンツまで含めて広がります。
スターの作られ方も変わりましたね。
競馬は「現地」から「接続」へ変わった
今回のデータで一番大事なのは、売上と入場人員の関係です。
90年代は、競馬場に人が集まるほど売上も伸びていました。
でも今は、競馬場に来る人が少なくても売上は伸びています。
これは、競馬が場所に縛られなくなったということです。
競馬場に行く。
WINSで買う。
スマホで買う。
家でグリーンチャンネルを見る。
SNSで感想を見る。
海外レースも買う。
参加の仕方が増えました。
競馬場は今でも大事です。現地で見るパドックや直線の迫力は、ネットでは代わりになりません。
ただ、売上という意味では、競馬場だけに頼る時代ではなくなっています。
地方競馬や海外競馬とのつながりも大きい
今の競馬人気を考える時、JRAだけを見ていても足りません。
地方競馬は平日やナイターで開催されます。
JRAは週末中心です。
この住み分けによって、競馬ファンは週末だけでなく、平日も競馬に触れるようになりました。
さらに海外競馬もあります。
ドバイ、香港、凱旋門賞、ブリーダーズカップなど、日本馬が出る海外レースはかなり注目されます。
海外馬券の発売もあり、日本の競馬ファンの関心は国内だけに収まらなくなっています。
フォーエバーヤングのような馬が出てくると、国内競馬と海外競馬の境目がどんどん薄くなりますね。
これからの競馬に必要なこと
競馬の売上は戻ってきました。
ただ、競馬場の入場人員は戻っていません。
ここをどう考えるかですね。
ネットで売上が伸びているから、それでいいという考え方もあります。でも、競馬場に人が来ないままだと、競馬というスポーツの熱量は少し弱くなる気もします。
やはり競馬場は、馬を近くで見られる場所です。
パドックで馬を見る。
返し馬を見る。
直線で歓声を聞く。
ゴール前で叫ぶ。
これはネットでは味わえません。
これからは、ネットで競馬を始めた人を、どうやって競馬場へ連れてくるかが大事になると思います。
初心者でも行きやすい競馬場。
女性や若い人が入りやすい雰囲気。
データ派も楽しめる情報環境。
家族連れでも過ごしやすい施設。
売上だけでなく、現地体験をもう一度作り直す必要があると思います。
日本競馬は復活したのか
数字だけ見ると、日本競馬は復活しています。
2011年に2.29兆円まで落ちたJRA売上は、2025年に3.49兆円まで戻りました。
総参加人員も増えています。
ただし、90年代の競馬ブームがそのまま戻ったわけではありません。
入場人員はピーク時の半分以下です。
売上はネット投票に支えられています。
スター馬の広がり方もSNSや海外レース込みになっています。
地方競馬や海外競馬との接続も強くなっています。
つまり、競馬は昔に戻ったのではなく、形を変えて復活したのだと思います。
90年代は「競馬場に人が集まる時代」。
2010年代以降は「ネットで競馬に参加する時代」。
そしてこれからは、「ネットと競馬場をどうつなぐか」が大事になる時代です。
競馬は一度衰退しました。
でも、終わったわけではありませんでした。
参加方法を変え、スターを作り、海外ともつながり、もう一度大きな市場になってきました。
この復活が一時的なものなのか、それとも成熟した新しい競馬文化になるのか。
これからのJRAと競馬ファンの作り方にかかっていると思います。

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